監督:イ・ジョンボム
出演:ウォンビン、キム・セロン、キム・ヒウォン、キム・ソンオ、タナヨン・ウォンタラクン
深田恭子と共演した日韓共同制作ドラマ「フレンズ」でウォンビンの存在を知ったアタシにとってこの「アジョシ」の映画に出てくるウォンビンは別人でした。
くたびれたビルの一室で質屋を営むテシク(ウォンビン)が唯一言葉を交わす相手は同じビルに住んでいる少女ソミ(キム・セロン)。
ソミの母親はクラブのダンサー。ソミには全く関心がなく、麻薬におぼれる毎日。
ある夜、ソミが家に戻ると母親のうめき声が聞こえ、戸を開けるとそこに居たのは母親の太ももに熱風吹き出すドライヤーを押し付けている見知らぬ男。
「オンマ!」(ママ)と呼ぶソミの目を後ろから目隠しする男。
同じ頃、テシクの質屋にも見知らぬ男たちが侵入していました。
−ソミの母親からバックを預かっただろ?
ナイフをちらつかせ、銃を突きつける男たちに動じる様子を見せないテシク。そんなテシクに対して見えない恐怖を感じ始める男たち。
ソミの母親が質草として持ってきたのはカメラが入ったバックだけ。それを差し出すと男たちはカメラを取り出し、乱暴にバックを切り裂いて−そこから出てきたのは麻薬でした。
麻薬を取り返した組織でしたが、ソミと母親を誘拐。
「アジョシ!」−両手を縛られたソミは大声でテシクに助けを求めますが、無常にもソミを乗せた車は猛スピードで走り去ってしまいます。
唯一心を許していたソミを助けなければならない。
−これ以上大切な人を失うことはできない。もう二度とあんな思いはしたくない。
ソミを助けるために組織の指示に従うテシクは、ある人物の元を訪れます。
テシクが組織に指示されたのは麻薬の運び屋。
罠にはめられたテシクはその場からなんとか逃げようとするも、テシクが使っていた車の中から出てきたのは…ソミの母親の死体でした。
ソミの母親に無残な死体を目の当たりにしたテシクは動けなくなってしまい警察に捕まってしまいます。
ソミの母親の死体の内臓はすべて取り除かれており、両目も刳り貫かれていました。
−生きたままやつらは両目を刳り貫いたんだぞ!
なんとしてもソミを助けなければ。
テシクは取り調べの最中に手錠を外させた隙に警察を脱走。ソミの救出へと向かいます。
麻薬組織の裏側で行われていたこと−それは臓器売買。
母親を殺されたことをまだ知らないソミは、あるところへ連れて行かれます。
−ソミ軟禁されたその部屋には、同じ年のころの子どもたちが軟禁されていました。
「いい子にしていればママに会わせる」
その言葉を信じ、その日が来るときれいな洋服を着せられ軟禁場所から連れだされます。
母親に会える喜びを隠し切れない子ども。
−これから自分の身にどれほど恐ろしいことが起こるのかも知らずに…。
警察はテシクの過去を調べ始めます。
テシクは情報特殊部隊の元要員であり、暗殺の任務についていた…。
テシクの恐ろしいまでの冷静さはこの特殊部隊で訓練されたものだったのです。
2006年、テシクの記録はこの年の交通事故のものを最後に途絶えていました。
−交通事故にあったはずのテシクの体に残っていた傷跡は銃によるもの。
交通事故で死んだのは−最愛の妻。まもなく母親になろうとしていた…。
あの日、テシクは妻を車に残し生まれてくる子どものために靴を選んでいました。
うれしさを隠し切れないテシクの携帯に緊急事態の連絡が入ります。
店を出ると車の中から笑顔で手を振る妻。「早くいらっしゃいよ」と手で招く妻。
テシクが見た妻の最後の笑顔。
もう二度とあんな思いをしたくない−テシクを突き動かしていたのはあの日の悲しみだったのかもしれません。
ボサボサの髪を自分で切り落とすウォンビンがとても美しい…。
「美しい」なんて形容詞を使うのはヘンかもしれないけど、本当に美しかった。
これからの決意を表す意味も込めて自分で自分の髪を切り、ひとり組織へ乗り込んでいく。
ほとんどのスタントを自分でこなしたというウォンビンは、今まで見た事のないウォンビンでした。
ちょっと頼りなさげな雰囲気を持つ役が多かったウォンビンだけど、除隊してからちょっと雰囲気変わったかも。
自分でも今までの定着したイメージを払拭するためにも意識してそういう役を選んできたのかどうかは分からないけど、韓国に行ったときに見た缶コーヒーのCMがね、忘れられなくて。共演はシン・ミナだったんだけど、ふたりの雰囲気がとてもよくて、本国では「ホントはつきあってるんじゃないの?」とウワサになるほど。
個人的にはそろそろ恋愛に身を焦がすウォンビンも見てみたいかな…。
とても残酷で、とても悲しいストーリーだけど、ラストで人間味を取り戻すテシクを見たら、客席にいるあなたもテシクをきっときっと抱きしめたくなるはずです。